野田総理大臣は消費税増税に政治生命をかけると言っている。これに対し国民新党の亀井代表は連立を離脱すると言う。また民主党の中でも小沢一郎氏を中心とするグループは役職からの離脱などで増税を牽制している。マスコミは本件については総理がやろうとしていることを他の者が邪魔しようとする単なる政治闘争としての観点でしか報道していないようだ。
果たして増税は政策として正しいのか間違いなのかについてはほとんどマスコミで報道されることがない。マスコミにも増税は不可避だとする前提があるようだ。
3月29日の産経新聞一面で渡部恒三元衆議院副議長が「国益が第一」欄で、不人気でも今すぐに増税が是非とも必要だと言っている。また渡部氏は「仮に、消費税増税法案が当面先送りされることになったり、廃案になったりするようなことにでもなれば、日本の政治、経済に対する世界の信頼は著しく損なわれるだろう。国債市場への影響も懸念されるところだ。反対を表明して、若い人を先導するような行為は本当に論外だ」と述べている。しかし、この増税ありきの議論は間違っている のではないか。そして日本の信頼が失われるとか、国債市場への影響が懸念されるとか、現実には起こりえないことで国民を脅かしているだけである。
我が国はこの20年間、一時を除き緊縮財政を続けてきた。公務員を削減するとともに、公共事業も減らし政府の支出を最小限にすべく努力してきたのである。公務員も減ったし公共事業も15年前に比べれば半分以下になっている。その結果、国の借金が減ったかと言えば逆に増えている。十年以上も国を挙げて緊縮財政をやってみて、全く国家財政が立ち直る兆候が見えない。そして景気が回復せず税収が減り続けているので、国家財政を健全化するためには増税しかないと言う。
しかし増税すれば税収が増えるのか。20年前は消費税3%でも我が国の税収は60兆円もあった。今は消費税5%なのに税収は40兆円程度しかない。税率と税収は比例しないのである。
いま政府は国家財政を健全化することだけを考えているが、現下の長期デフレの状況下で増税を行えば、景気はより後退することは明らかである。消費税を導入したときも、消費税を3%から5%に上げたときも景気は減速し税収は減少している。いま増税を行えばまた10年デフレが延長されるだけである。国家財政はしっかりしているが、景気は最悪で、国民は仕事もなく苦しんでいるのでは本末転倒ではないか。
野田総理は1930年の浜口雄幸首相、井上準之助蔵相の「男子の本懐」を真似ているのではないかと思ってしまう。城山三郎の著書「男子の本懐政治は結果で評価されるべきであり、一生懸命やればいいというものではない。彼らは政治家としては無能だったのである。彼らは日本経済をめちゃくちゃにしたが、後の犬養毅首相、高橋是清蔵相の金融緩和政策によって日本経済は復活することになるのである。
いまの日本は積極財政に転換すべきだと思う。緊縮財政を20年もやってきて全く効果がないのだから、そろそろ緊縮財政を諦めた方がいい。この20年間の我が国不景気の中で、緊縮財政を止めて積極財政を実施しようとした小渕内閣、麻生内閣のときに景気回復の兆しが見られたのではないか。
経済学者の中で、三橋貴明氏、上念司氏、植草一秀氏、高橋洋一氏などが、政府やマスコミの言っていることとは正反対の積極財政論を展開しているが、私はこれらの人たちが言っていることが正しいのではないかと思う。我が国は借金が多く財政破綻を招くということは随分前から言われているが、いまだ破綻の兆候はない。先ほどの経済学者の皆さんは、我が国は現在のところ全く破綻を心配することはないと言っている。900兆円の借金のうち地方債の200兆円、建設国債など300兆円は担保の取れる借金で、いわゆる赤字国債は400兆円に満たないそうだ。そして我が国は赤字国債を上回る金融資産を持っているとか。
具体策としては政府が国債を発行し公共事業を推進する。国債は日本銀行にこれを買い取ってもらうことがいいそうだ。まず50兆円やってみる。そうすれば50兆円分の1万円札が市中に出回ることになる。それでも景気回復の兆候が見えなければ次の50兆円をやってみる。繰り返せば必ず景気は回復する。景気が回復すれば税収が増えて国家財政も立ち直るのだ。財政立て直しを先に考えると景気はどんどん悪くなる。デフレのときは大きな政府を目指すべきなのだ。
我が国が長期デフレを続ければ、我が国の優良企業がアメリカや中国などからどんどん買収される。外国は大歓迎だ。世界一の資産国である我が国は世界中から狙われていると思わなければならない。